伝統とは革新の積み重ねであり伝承ではない

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農業でもものづくりでも伝統という言葉をよく聞きます
「伝統野菜」
「伝統工芸」
など

でも伝統ってなんなのでしょうか?

世間一般に【伝統】というと
守るべきもの
繋げるもの

というイメージがあるような気がします

受け継がれてきたのだから
自分で途絶えさせることなく
受け継いできた内容がいささか不便であったり
いささか時代にマッチしていなかったとしても
次の世代へ
後世の日本へ
流れを続けていかなければいけない

世間的にはなんとなくそんな気がしてなりません

仕事柄農業だけでなくものづくりにも顔を出している今日この頃ですが
現場の方々と話をしていたり
見させていただくと
伝統って言葉はそもそも邪魔なのではないかと思っています

それは
守り受け継ぐ者ではない
からです

猿楽といわれる演劇の世界に生まれ
父の革新性と本人の斬新性により「能」という演劇をつくりあげた世阿弥
彼の言葉の1つに
「住する所なきを、まず花と知るべし」
という言葉があります
これは
「そこに留まり続けることなく変化していくことこそが芸術である」という意味です

それまで猿楽という世界の中から
父・観阿弥が全く新しい世界の扉を広げました
そして世阿弥がそれを体系化していったのです
その際に彼は秘伝書とも言えるべきものを書きしるし
血族ではなく優秀な者がそれを見て「能」ができるようにとされたそうです

さて
世阿弥は「能」を守るために書いたのでしょうか?
私はそうは思いません
彼はこれまでになかった全く新しい世界を創り出し
一方でそれがしっかりと構築されるには
多くの人々に定着させていく必要があると考え
次の世代へとバトンタッチをしていったのだと思います

そしてそれは完成品ではなくあくまで未完成というものを受け渡し
優秀な後世の者がそこに新しい色をつけていってほしい
そう考えていったのではないでしょうか?

伝統野菜
伝統工芸

これらは先駆者が後世になんとしても残したいが為に生み出したのでしょうか?
違います

例えば
伝統野菜
これは徳川幕府時代に三代将軍家光が行った参勤交代によって
全国の農産物が江戸に集まり(各大名屋敷でもつ畑で育てていた)
その中で環境適応を起こして変化をしたり
違う地域の野菜を気に入って本国に持って帰り
そこで環境適応を行い生み出されたものです

伝統工芸品も
身の回りの素材を活かして生活に役立つものを作っていこうとした際に
適した素材と活かしやすい細工の掛け合によって
本人たちが必要とする生活雑貨が生まれていったものです

さて
これらは守るべきものなのでしょうか?
伝承すればいいのでしょうか?

違います

常に
好奇心をもち
これまでのものに少しでも新しい価値を追加して
革新に対して恐ることなく
止まることなく動き続けていった結果
カタチとなってきたのではないでしょうか

今、重みをましているように思える「伝統」ですが
伝承をするものではなく
もちろん途絶えればいいとか無くしていいと思っているわけではなく
今、関わっている方々が
自分の技術と叡智を活かして革新させていくことができるものではないでしょうか

400年前の江戸時代に
伝統野菜
とは呼ばれていないですよね
きっと
珍しい野菜
だったはずです

明治時代に入ってきたトマト
まだまだ開発が続けられて
珍しいトマト
が生み出されています
400年後に伝統野菜として残そう
そんなことは考えていないと思うんですよね

私も
仕事をしていく中で
過去の成功体験や
達成したことを残す為に活動をするのではなく
積み重ねてきたものを常に良い意味で破壊していきながら
少しでも良いカタチへと高めていきたいと思っています